(5)永遠の名作~Chuech's LAST 73
現在のチャーチの主力ラストは、ヨーロッパにおいては#100、日本では#173が中心となっているが、創業以来長年の主力であったのは#73というラストであり、コンサル、ディプロマット、チェットウインドといった御三家も元々は#73によるものであった。
「73」という数字は、チャーチが創業された1873年に因んでいる。
しかし、ズングリした#73の足形は現代人の足に合わなくなったため、#100という新しいラストにその主役が譲られた。
さらに日本では、#100に#73のシルエットを取り入れた#173というラストが現在の主流である。
ブレア首相のチェットウインドも当然#73である。しかしながら#73は廃止されてしまったので、ブレア首相と同じ靴はもう手に入らない。
(6)チャーチ3足目
例のイギリスの通販サイトを眺めていると、ラスト73が売られていた。復刻版だ。
しかも、#100は310£なのに、復刻版は195£というお値打ち価格になっているではないか。
チェットウインドも「Brisbane」という名前で#73として復刻している。これはブレア首相の靴とほぼ同じということになる。
これは是非とも手に入れたいが、#73を履いたことがないので、サイズの予測が全くつかない。
そこで、ネットで、複数のチャーチを所有している人の情報を徹底的に調べてみた。
集めた情報を総合すると、#73はチャーチの他のラストより全長が短く、#173の1サイズ下でちょうどよいということで一致している。
ということは、今度こそ7.5Gでちょうどよいはずである。
かなりギャンブルになるが、勢いで注文してしまった。
前回は発注した日の5日後に届いたので、逆算して休日に届くように曜日を選んで発注。読みはピッタリ当たり、休日の夕方に届く。
靴の値段は前回より若干高いが、関税はまた5千円だった。
ドキドキしながら荷をほどく。手に取ってみると、硬っっっ!!!なんじゃこりゃあ!(松田優作様、いつもすいません)
すでに持っている2足とは比較にならないくらい硬い。これがよく話に聞くチャーチ本来の硬さなのか。
このまま履くとひび割れしそうなくらい硬いので、モーブレーのデリケートクリームをたっぷり塗って保湿。
底にも保革材をどっぷりと染みこませたあと、ぐにゃり折り曲げの儀式。
だいぶ柔らかくなったので、足を入れてみる。
JUST FIT !!!!!チーニーを試着した時と同じ感覚だ。長さも幅もちょうど良く、甲もべったり足に張り付いている。
このラストは、わしの足に合っている。感動だ。ついにあこがれのブレア・ラッキーシューズを手中にした。
わしも幸運にあやかるよう、毎週の定例会議の時にこの靴を履くことにしよう。
(7)チャーチが好きだ
それにしてもチャーチは履き心地がよい。「チャーチは調教に3ヶ月はかかる」という定説があるが、わしの場合なぜかすぐ馴染む。
さすがに#73は、慣らし履きして30分ほどでマメができたが、休日2日間、ヒンズースクワット攻撃で返り癖をつけ、月曜日のデビュー時にはすっかり柔らかくなった。
この日は1日履いても足が痛くなるどころか、逆に気持ちよかった。
#73は形が足に合っているし、武骨なデザインは男っぽくてかっこいい。
廃止されたラストなので、もしかしたらもう手に入らなくなるかもしれない。しかも4万円台で買えるのだから、この機会にもう2足くらい買っておくか。
送料は1足20£だが、2足まとめ買いだと25£と割安だ。
というわけで、我ながら狂気の沙汰と思いつつ、バルモラル(キャップトー)とパース(ディプロマット復刻版)をまとめて注文。
これでもう靴を買うのは終わりだ(多分ね)。墓場まで履いて行くにも十分なくらい揃った。もう買わない(多分)。
総額では自分でもあきれるくらいの投資額となったが、わしの1足当たりの許容範囲は5万円である。それ以上の靴はもう履き物の範囲を越えている。
エドワードグリーンなどは値段相応に素晴らしい靴らしいが、そんな靴は恐くて履けない。
靴は履かれるために生まれてきたもの。部屋に飾っておくものではない。
そういう意味で、そこそこの値段で、履き心地がよく、しかも丈夫で長持ちのチャーチは、わしにとっては究極の靴なのだ。
(靴体験記篇はこれで終了。次回からは総括篇)
自分の足にGが合うかどうかは、Fで試着してみた感じで推測するしかありません。(私もそうでした)
Gが不格好かどうかは個人の好みの問題ですが、ラストによっても違うと思います。
73の場合は元々ボテっとした形なので、Gはスマートとは言い難いです。逆に002はGの方が無骨で私は気に入っています。
甲高幅広の人に合うかどうかもラストによります。ちなみに73と002は幅広ですが、甲はかなり薄いですよ。
173と73では、捨て寸、幅、甲の高さ、踵廻りのすべてで大きさが違います。したがって、173が足に合うなら、73は上記のどこかが合わないと思います。
同サイズで比較した場合、以下のような感じです。
捨て寸:173>>73
最大幅:73>173
甲の高さ:173>>>73
踵廻り:173>>73
他人の情報はあくまで参考にしかなりません。真に受けてそのとおりにすると後悔しますよ。
試着できない以上、最終的にはギャンブルになりますので、ご自分で判断するしかないです。
では、ラスト81はどのような履き心地でしょうか?
当方、ラスト173の65Fをはいています。概ねフィットしていると感じています。(一月半履いて親指の付け根がまだ痛いのは、変なシワがついたのと、革質かもしれませんが)
同じ65Fで81ラストを履いた場合どの辺に違いが出ますでしょうか?
なので、コンサルやディプロマットのようなカーフアッパー・レザーソールの靴との純粋な比較は難しいですが、おおまかな感触で言えば73に似ています。幅は同じくらいで、甲の高さと踵廻りは81の方がわずかに大きい感じがします。
173とは捨て寸の大きさが全然違いますし、フィッティングはかなり違います。
親指の付け根が痛いのは、木型が足に合っていない可能性が高いと思います。甲が余りすぎているか、ボールジョイントの位置が足にあっていないかのどちらかの場合によくある症状です。
チャーチの場合、甲の厚さは、試着の段階では、無理してようやく足が入るくらいでちょうどよくなります。
試着の時にすんなり足が入って、甲の部分に全く圧迫感がない場合は、甲が大きすぎです。
親指の付け根の痛みは左足のほうだけなので、もしかすると左右の足の形がかなり違うのかもしれません。
とすると173の場合はハーフサイズ下げるといいかもしれませんね。002は60Fだと試着で甲がしまりませんでした。
製造過程で木型に革を被せる時のテンションも微妙に違うでしょうし、そもそも素材の革の厚さが違うことも多々あります。(極端な場合、同じ靴の左右で違うこともあります)
同じラストであれば、ソールの最大幅が違うというようなことはありませんが、甲のフィット感はけっこう違う場合があります。
結局、試着できない限り、自分の足に合わないリスクはゼロにはなりません。
たとえ同じラストでも、内羽根と外羽根、縫い目の有無や形などのタイプが違えばフィッティングが違うリスクが大きくなり、似ていればリスクが小さくなるだけのことです。
ご検討されているシドニーとバルモラルの比較については、プレーントーとストレートチップ、モンクストラップと内羽根とという点でタイプがかなり違うため、全く同じフィット感にはならないと考えておいた方が無難と思います。
また、グラフトンの場合は特に要注意です。この靴は同じラストであっても全く別のラストと考えておくべきです。
私の場合、#73のグラフトンを持っていますが、ソールの形や大きさが他の#73のそれとは一見して明らかに違います。